五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)
□03-少年とJK
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2017年の現代から1999年の渋谷へと来たアミは衝撃を受けていた。
まあ、聞いて! 渋谷はアミの庭なんだけど。目の前の光景がヤバすぎるの!
知ってる建物が無かったり、お店が違ってたり、工事中だったりするのは良いんだけど、渋谷にいる人間が全然違う!!
――絶滅危惧種のガングロギャルたちが、パラパラ踊りまくってる!!!!
分厚い厚底ブーツに超絶ミニスカートのガングロお姉さん。超絶ミニスカートでルーズソックス太過ぎの制服ガングロギャル。
メイクもね、黒人さん!?ってくらい真っ黒目の肌に、真っ白の口紅とアイラインとか引いてて、もう!なんか!ヤバいよね!!
そんでもって、路上でアップテンポの音楽を流してパラパラを踊ってる子たちがたくさんいてウケんの!!
男の子でも肌を黒く焼いてる人が多いから、この時代は小麦肌が主流なのかな?
他にもなんかマイクみたいなの持って、世紀末が〜、とか、大予言が〜、って演説したり、宗教っぽい感じの人もアミのいた時代よりも多い気がする。
――昔の渋谷。ヤバッ!
アミは元いた時代とのギャップを目の当たりにして、ちょっと密かにテンションが上がっちゃった。
案外楽しいじゃん! 時間旅行!!
※
――さってと、じゃー、ごじょーさとるでも探しに行こっかな
ひととおり1999年の渋谷を満喫したアミは、とりあえずの目的を思い出す。
ごじょーさとるは、アミのいた施設では有名なバケモノだった。
ジジイが目の敵にしてるバケモノで、施設の大人も良く話をしてた。
ごじょーさとるってなに? どんなの? って聞いたら、毛が白くて目が可笑しくて、デカくて強いバケモノって言われたから、そんな感じのバケモノを探せばいいんだよね。
ていうか、そもそも18年間も生きてるバケモノってヤバくない?
基本的に施設では、生まれたてほやほやのバケモノを退治するのが普通だった。
バケモノは弱いうちに倒しましょう! これ鉄則ね!
一回だけ、アミ達が施設から逃げた時に、めちゃくちゃ大発生したことがあったけど、その時は結局、最後は大人たちが処理したらしい。
てか、大人で処理できるなら、普通に大人たちが処理すればいーのに!、とアミはいっつも思ってる。
――ごじょーさとるを殺すためにアミは過去に来たけど、アミ自身がごじょーさとるを殺す必要もないしなー…
ごじょーさとるを殺すために過去に来ることと、ごじょーさとるを過去で殺す事はイコールじゃなかったりする。
ジジイが言った事を素直に受け取るなら、ごじょーさとるというバケモノを過去で退治しなくちゃいけない風に聞こえるけど、タイムスリップってそう簡単じゃない事をアミは知ってた。
だからアミは、こじょーさとるをこの時代で殺さない。
というか、そもそもジジイや施設の大人が手こずっちゃうバケモノをアミが殺すなんて無理だと思う。アミか弱いし。逆に死んじゃうかもだよね。
うん。だから、こじょーさとるを見るだけ見て帰ろう!
どうやって探そうかな、と思って周囲を見渡すと、小学生くらいのメッチャ可愛い男の子と視線があった。
――なに? あの目、ちびっ子の癖にカラコン?
男の子は宝石みたいなキラキラした青い目をしていて、アミは普通に羨ましいと思った。
そういえばこの時代にカラコンってあるのかな? つけてる子はあんまり見かけなかったけど。あとで時間あったらリサーチしてみよう!!
視線がバッチリあったのに、無視をするのも悪いかな? と思って、アミは男の子にニッコリ手を振ってあげた――ら、無視された。
――まあ、知らない人には関わっちゃダメって、学校で教わるもんねー。
この男の子、なんか伊地知パパに似てるなー、なんて思いながら深く気にせずアミはその場を後にした。
※
あのね、実はアミはバケモノが見えないんだ。
だから“お助けアイテム”のメガネの“ミドリちゃん”をかけないと、バケモノを見ることが出来ないの。
ミドリちゃんを着用するのは今みたいにバケモノを探すときか、バケモノを退治する時。
ちなみにどうでもいい話だけど、アミは一般人の友達にばれないように、バケモノ退治に行く時は“闇バイト”って誤魔化してる。
まあ、そういう事で、ミドリちゃんを装着しながらアミは渋谷を練り歩いた。
※
お昼を回ってもごじょーさとるは見つからなかった。
「お腹すいたぁー…」
空腹を紛らわすためにブドウ味のチュッパチャップスを口に入れる。
バケモノはたくさん見かけたんだけど、アミでも倒せそうなヤツばっかりだから、コイツらはごじょーさとるでは無いと思うんだよねぇー。うーん……
てか、アミが生まれる前からこんなにバケモノがたくさんいるなんて世も末じゃん。
バケモノだらけの渋谷に、アミはちょっとゼツボーしてた。
と、そんな時。
ぶーん、と目の前から虫の形をした気持ち悪いバケモノがアミに向かって飛んできた。
このまま行けばアミに直撃だ。
――ゲッ、最悪なんだけど…
避けてもいいんだけど、ふつーの人はバケモノ見えないからアミが頭の可笑しい人になっちゃうんだよね。この場合。
こういう事あるから闇バイト以外でミドリちゃんかけるの嫌なんだよねぇ……。
アミは、ゆーうつな気持ちを堪えてそのまま歩き続ける。
虫のバケモノがまっすぐとんできてアミにそのまま直撃。
パンッ――虫のバケモノはアミに触れた瞬間に消えてった。
アミには不思議な力があって、弱いバケモノなら何もしなくも触るだけで倒せる。
アミが対ごじょーさとる用作戦兵器なんて呼ばれてる理由も、この不思議な力のせいだと思う。
バケモノ退治の時に他のヒーローの子の不思議な力も消しちゃうから、使い方には気をつけなくちゃいけなくて、割と不便だったりもするんだけどね。
ただこの力のせいで、とってもか弱いアミでさえヒーローとして強制的にバケモノ退治に駆り出されちゃうから、むしろいらない。
あっ、でもこの力が無かったらもっと昔に施設の大人に殺されてたかもだから、やっぱりあってよかったのかな?
「おい」
後ろから声をかけられて振り返る。
そこには、さっきアミをガン見してた可愛い男の子がいた。
「オマエ、何してんだ?」
男の子はキラキラした目でアミの事を睨んできた。
「はっ? いきなり何なの?」
「何してんだって、聞いてんだよ」
なに、この子? とアミは首を捻る。――んー、まー、でも子供だしそんなに警戒することもないかな? 適当にすればいっかと、男の子に向き合う。
「うーん、まあバケモノ探し?」
「バケモノ? ジュレイでも探してんの?」
「じゅれー? なにそれ」
「さっきお前がハラッてたヤツだよ」
「ああ、アレじゅれーっていう名前のバケモノなの?」
「?……ジュレイはジュレイだろ?」
「意味わかんない。アミの巷ではアレはバケモノだよ」
お前の巷なんか知らねーよ、と男の子は嫌そうな顔をした。――可愛い顔をしてるけど、失礼だなぁ。この子…。
「じゃあ、お前が探してるジュレイ……バケモノってどんなヤツだよ?」
「うーん。アミもよく知らないけど、ごじょーさとるってバケモノだよ」
急に男の子の目つきが鋭くなる。――あ、これなんかアミ警戒されてる?
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